Black Joke
「悠さん!コレ、何処に飾りましょうか?」
「・・・ヤドリギ?」
「えぇ。海里から送られ来たんですよ」
「へぇ・・・海里ちゃんから・・・」
石川は物珍しそうに『ヤドリギ』を見て、暫し悩む―
何故なら、この部屋には『ヤドリギ』を飾るような場所がなくて・・・そしてふと、窓際を見上げ―
「ここでいいんじゃないか?」
「そうですね。じゃあ、ここに・・・・っと・・・どうですか?」
「うん。いいな」
「そうですね」
「・・・あっっ!基寿!時間が・・・」
「やばっっ!行きますか」
「あぁ」
バタバタと部屋を出た二人だが―まさか、この後この『ヤドリギ』で一騒動起こることになるとは思いもしてなかった・・・
+ + +
その日の午後―食堂へと現れた石川と岩瀬の元へ、宇崎がやってきて・・・
「飲み会?」
「うん。クリスマスも近いし、同期で集まって飲まないかな?って・・・ダメ?」
「いや。いいんじゃないかな。久々だし・・・」
「そうだよね!で、本格的に忙しくなる前にしようかって・・・で。今日なんだけど・・・」
「今日?何処で飲むんだ?」
「えっと・・・」
そこで急に歯切れが悪くなった宇崎の変わりにクロウが―
「明日も普通に仕事だし・・・誰かの部屋で飲もうかって話なんだけど・・・石川の部屋借りてもいい?岩瀬も一緒の方がいいんだろ?」
ニコッと笑って聞いてくるが・・・『拒否権なし』の空気を漂わせている―
それに石川は笑って。
「最初からそう言えばいいのに・・・いいよ。何時から?」
「えっと・・・皆、多分終わるのバラバラだろうから―終わりしだい集合でどうかな?」
「OK」
「了解」
「じゃあ。俺、西脇にも言っとくね!」
「あぁ、頼んだよ宇崎」
「じゃあ、俺休憩終わりだから―」
「じゃあ、今晩」
「うん。じゃあね」
そう言って席を立ったクロウと宇崎は、去り際に石川と岩瀬に向かって―
「急でゴメンね!でも、楽しみだから・・・」
「いや。俺も楽しみだし」
「えぇ。俺もですよ!」
「そっか。良かった・・・じゃあ!」
「後で」
手を振りながら、クロウと宇崎は食堂を出て行った―
「・・・『同期』でって・・・俺も居てもいいんでしょうか?」
ふと、聞いてくる岩瀬に笑って。
「いいんじゃないか?それに・・・一緒の方が俺も嬉しいし―」
「石川さん・・・!!」
「後は・・・仕事が普通に終わればいいんだが・・・」
「そうですね!」
石川と岩瀬はのんびりと昼食を食べて、午後の仕事へと戻っていった―
+ + +
「お邪魔しまーす」
「いらっしゃい」
「あ。もう皆集まってんの?」
「あぁ。宇崎が最後だな」
「あ。コレおつまみ」
「有り難う、座って」
「うん」
宇崎が石川達の部屋へと入ると―そこには西脇と橋爪とクロウが座っていた。
宇崎が座ると、クロウがグラスを差し出して―改めて乾杯となる。
「「「お疲れー!」」」
乾杯!とグラスをあわせ、皆で楽しく飲み始めた―
+ + +
イイカンジで、皆が酔い始めたころ―
クロウが窓際を見上げて、ニヤリと笑った・・・そして。
「石川、ちょっと」
「クロウ?」
「いいから」
『おいでおいで』と手招きして、窓際へと寄って来た石川に微笑む。
「石川、知ってる?」
「なにが?」
「『ヤドリギ』の下だと、誰にキスをしてもいいって―」
「ほぇ?」
クロウはよく解ってない石川を引き寄せる・・・そして、チュッとキスをした―
「「クロウ!!」」
「クロさん!!!!」
何気なく見ていた皆の前でクロウは人の悪い笑みを浮かべ―
「だから。この下だとキスしても起こられないんだろ?な。岩瀬」
クロウはこの中で一番クリスマスに関して詳しいであろう人物―岩瀬に問いかける。
「それはそうなんですけど・・・でも!ソレとコレは違いますっっ!!!」
「あ。じゃあ、キス―返そうか?岩瀬に」
「えぇぇぇ・・・・!?」
クロウの爆弾発言に一同が恐れおののいていると―酔っ払っている石川が、叫んだ。
「ダメだ!!岩瀬は俺のものなんだから!!!」
今度は石川の発言に皆が頭を抱える・・・約一名を覗いて。
「悠さんvv」
「「石川・・・」」
西脇達の溜息交じりの非難は石川には届いてなく。
そんな皆を尻目にクロウはニヤニヤと笑いながら、石川に問いかける―
「ふぅん・・・ダメなんだ。『ヤドリギ』の下でも?」
「ダメなものはダメ!!」
フラフラと岩瀬の元へと戻った石川は、ギューーーっと抱きつき。「ダメーー!」と連呼している・・・
そんな石川に岩瀬は嬉しさを隠し切れず・・・思いっきり笑顔で抱きしめ返している。
そして呆然と事の成り行きを見ていた皆は―
西脇は呆れ返った顔で一言。「・・・帰っていいか?」
橋爪は「西脇さん・・・それは・・・」
宇崎は「うん・・・帰っていいかもよ?」
クロウは大爆笑しながら―「邪魔者は消えようか」
既に『二人の世界』へと旅立っている二人をよそに。
皆はコッソリと部屋を後にした―
部屋への帰り道。
西脇はクロウに―
「クロウ・・・なんであんな事を・・・」
「え?だって、最近、石川疲れてたからね?たまには息抜きも必要デショ」
「・・・クロウ・・・」
「クロウさん・・・・」
「まぁ。俺からのクリスマスプレゼント?」
ニコニコと微笑むクロウに対し誰も突っ込まなかったが。心の中では皆思っていた・・・・
『絶対!楽しんでるよ!!!』
何処までも、自分の楽しみに重点を置き、しかも一番美味しいトコ取りをする男―それがクロウド・クロウその人であった・・・
そして酔っ払った石川と岩瀬がどのような夜を過ごしたかは秘密であった―
クリスマスまで後6日―
2006.12.19 UP